こちらでも、あちらでも
アンソニー・デ・アルコス宣教師 説教要約
使徒言行録9章1-9節、17-19節、13章2、3節、23章9-11節
2023年3月19日
Ⅰ. はじめに
私は35歳です。昨年のクリスマスに、母が「レゴのセット」をプレゼントしてくれました。レゴを使って何かを作るのは、高校時代、学校の課題で使って以来です。
プレゼントされたセットは、ゴッホの「星月夜」のレゴバージョンでした。2,300以上のパーツがあり、夕方30~40分しか作業できなかったので、完成までに1週間以上かかりました。 作業を進めながら、こうしたものをデザインできる人がいることに驚きを覚えました。完成形をイメージし、それを実現するのに最適なパーツを決め、さらに逆算して説明書の土台となるパーツを特定しなければならないからです。同じように、私たちの人生においても、プロジェクトや人生の季節やステージが終了するまで、すべてのピースが互いにどのように組み合わされているかを振り返ることはできません。
Ⅱ. パウロへの導き
パウロは、キリストの使徒になることを望んでいたわけではありません。彼は熱心なユダヤ教徒として教会を迫害していました。その途中でパウロの人生に神さまが介入されたのです。彼は目が見えなくなりました。視力が回復したのは、彼が迫害していたクリスチャンの一人アナニアを通してだったのです。この結果、パウロには新たなビジョンが与えられることになりました。
私自身も牧師になりたかったわけではありません。 会計士になるために学校に行き、ビジネスで修士号を取得し、その後、州政府で働きました。2014年のある日、仕事中に神さまから電話がかかってきたのです。正確な言い方をするなら、教会の牧師さんを通して神さまが語ってくださったのです。
教会の中学科担当牧師が辞めるので、あなたがその働きを引き継がないか、というお誘いの電話でした。私はすぐに断り電話を切りました。しかしその直後、神さまが「電話を掛け直し、この働きについて尋ねるように」と促されているように感じたのです。こうして、私は中学科担当の牧師になり、それも四年間、その働きに就いたのです。
Ⅲ. パウロの働き
パウロは、回心し十一年目に、バルナバとともに最初の宣教の旅に出ることを命じられました。その後、十二年間で三回の宣教旅行に出ました。宣教の様々な場面で、濡れ衣を着せられ、殴られ、投獄される経験をしました。そのようにして聖霊の働きの中で、教えや手紙を通して、誕生したばかりの諸教会に伝える知恵を習得していったのです。
若い頃、ゲームやアニメなどの日本文化への興味はありましたが日本宣教に出かけるなど、考えてもみませんでした。そうした中2012年のある日、祈っていますと「日本に出かけて行きなさい」と語りかけるのを神の御声を感じたように思ったのです。
二週間後、教会で、友人のキース・バーンズ先生と会う機会があり、彼が宣教師になる計画と、2014年に宣教旅行の計画をしていることの話を聴きました。そしてその宣教旅行に参加することになったのです。日本滞在の後半、祈りの中で、神さまが再び日本に戻ることを望んでおられるような思いを与えられました。そのようにして次は2018年に再来日する機会が訪れました。今度は、リビングストリーム教会のユースのために企画した宣教旅行の引率としてでした。この時、すでにキース先生は宣教師として日本に滞在しており、彼を通して私は松本牧師と高座教会を知らされたのです。
2019年、再びユースを引き連れて来日し、高座教会との関係はより密になりました。2020年にも来日予定でしたが、コロナ・パンデミックにより、その計画は、無期限の中止となりました。
パウロも第三回の宣教旅行の後、エルサレムに行き、かつて自分が属していたユダヤ教の指導者たちと対峙することを余儀なくされました。自らの回心について証しし公に福音を語った後、裁判にかけられました。彼らの間に激しい口論が起こり、パウロの安全を確保するためローマ軍の兵営に連行されました。次の晩、神は彼に人生の新しい方向性を与えます。それはローマで証しをすることでした。ただ、そこへの道のりは平坦ではなく、投獄され、命を狙われ、さらに難破も経験しました。やっとのことでローマに到着した後も投獄され、多くの困難に直面しました。その一つひとつは彼が望んでいたことではありませんでしたが、そうした経験が、後の働きの備えになっていたのです。
Ⅳ. それぞれにとっての「ローマ」とは
2019年の日本への宣教旅行の後、妻のジェニファーと私は今後のことについて祈り始め、2023年に日本に一年間、住むように神さまに導かれているのを感じたのです。しかし、当時はコロナ・パンデミックの最中でしたので、それは不可能なことのように感じられてました。ただパウロのそれと比較すれば、まだまだ、たやすい方だと思います。日本は私にとっての「ローマ」でした。
神さまが、いつ日本に導かれるのか、そこにおいて何をさせたいのか具体的には分かりませんが、神さまはそのために私を訓練してくださっているとの確信はありました。
そのようにして、妻と私が日本に来る道が開かれた理由は二つあると信じています。
第一の理由は、日本ですでに始まっている神さまの働きを支援するためです。私たちが何か新しいことをしようとは思っていませんし、出来ないと思います。むしろ、私たちは既に始まっている働きを支援したいと思っています。アリゾナでの経験を日本にご紹介できたらと思います。そのような思いで、私たちはWINGの活動に参加しています。
WINGは私たちが来る前に既に始められていて、私たちが帰国した後も、続いていくことでしょう。私たちの滞在中に、その働きが少しでも豊かなものになるお手伝いをさせていただきたいのです。
二つ目の理由は、私たち自身が学ぶために日本に導かれたということです。私たち夫婦は、日本について、また日本の教会について学びたいと考えています。
皆さんが、熱心に信仰しているのに、なぜ多くの日本の方たちはイエスさまを信じないのかについて学びたいのです。皆さんから証しを聴かせていただき、そうした上で、この国でもっと多くの方たちに福音を伝えることについて考えたいのです。
私たちは、アメリカにいるクリスチャンと日本のクリスチャンが互いに理解し合う必要があると思います。
私たちがアメリカの地で福音を受け入れ、福音に生きているように、皆さんもこの国において福音を信じ、福音に生きておられることでしょう。しかしその具体的な現われは異なるかもしれません。一方が他方より優れているわけではありません。日本とアメリカの文化は異なるからです。私たちはフラットな関係で学び合う必要があります。そのようにして、日本で学んだことをアリゾナに持ち帰ることができればと考えています。
私たち夫婦は、私たちに与えられた、これからの人生をかけて、日本で福音を広めるために働くことをお約束したいと思います。私たちは、日本にずっと住み続けるわけではないかもしれませんが、人々をキリストに導くような永続的な関係を築くために時間を費やしたいと思っています。
パウロは宣教旅行の旅先において、何が起こるか予想することなど不可能でしたが、彼には神が自分を用いてくださるという確信があり、その神さまのお召しに従うことの大切さを知っていました。
妻のジェニファーと私は、旅のどのようなステージに置かれているかは分かりませんが、しかし神さまが私たち夫婦を用いてくださると確信しています。神の語りかけに耳を傾け、そのお方に従うためにベストを尽くしていきたいと思います。私たちの努力が実を結ぶのは、何年か後にここで過ごした時間を振り返ってからかもしれません。
さて、ここにおられる皆さんそれぞれに、皆さんにとっての「ローマ」、すなわち神さまの御心があります。ある人にとっては、教会形成に参与することかもしれません。ある人にとっては、伝道者として働きを開始することかもしれませんし、身近な人に福音を証しすることなのかもしれません。神さまは、私たちが生かされている目的を達成するために、訓練を与え、経験を積み重ねる機会を提供してくださっているのです。
ですから、神さまが何を望んでおられるかに耳を傾け、その御心に従って歩み出されることをお勧めしたいのです。そして、いつか振り返った時に、あのレゴセットのように、神さまが私たちの人生のすべてのピースをどのように組み立ててくださったのか、神さまが私たちに意図された人生の絵柄がはっきりと見えるようになることを願っています。
ありがとうございました。