三方よし

「あなたがたの光を人々の前に輝かせなさい。」 (マタイによる福音書5章16節)
 ノーベル経済学賞を受賞した日本人はまだいないのですが、日本には世界に誇れる経営学があると思います。日本的経営の原点は、江戸時代に石門心学を開いた石田梅岩に遡りますが、その道徳と経済を両立させた思想は、近江商人に引き継がれました。近江商人は、近江(滋賀県)に本宅を置き、他国へ行商して歩いた商人です。出向いた土地で愛され、貢献する存在にならなければ、明日の商いはない。自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを願う「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」という商売を大切にしました。商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売という考え方です。その精神は、渋沢栄一らが「論語と算盤」を基礎として受け継ぎ、松下幸之助を代表とする経営者は家族的組織を育むようになり、戦後の日本社会を支えました。ですからアメリカ企業の科学的管理法とは一線を画しています。現在の日本のブラック企業を近江商人が見たら、どのように思うのでしょうか。 イエス・キリストは「あなたがたは世の光である」(マタイ5:14)とおっしゃいました。私たちは神さまから「世の光」としてこの世に置かれています。イエスさまを「太陽」にたとえるなら、私たちは「月」です。私たちは自分から光を発することはできませんが「太陽」であるイエス・キリストの光を受けて輝くことができます。それは自分たちだけの光ではありません。社会を照らすのです。世の中に暗闇があるならば、そこに光を当てる者となりなさい「人々の前に輝かせなさい。」と聖書は教えています。私が輝き、あなたが輝き、社会が輝くことを、神さまは望んでおられます。それが世の光として、この世に置かれている、私たちの生き方なのです。
《祈り》神さま、あなたは「商売」という営みを人間に与えてくださいました。人は商売を通して人と繋がり、社会と繋がることができます。その繋がりを通して、あなたの光を照らすことができます。主よ、どうか神の国を広げることができるように、私を用いてください。
牧師 和田一郎
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