ただ神の栄光のみ

「すべてのものは、神から出て、神によって保たれ、神に向かっているのです。栄光が神に永遠にありますように、アーメン。」 （ローマの信徒への手紙11章36節）
　音楽の父と呼ばれるヨハン・セバスチャン・バッハは、多くの讃美歌を作りました。自身が作曲した楽譜の最後に、よく「SDG」とサインしたそうです。それはラテン語で「ソリ・デオ・グロリア（ただ神の栄光のみ）」という意味なのです。バッハは神を賛美する素晴らしい作品を作りましたが、神の栄光があらわれますようにと祈りながら作曲したのでしょう。自分自身の力だけではなく、神さまから与えられた賜物で作曲したというバッハの信仰の告白です。 そこには、同じドイツの教会の宗教改革者ルターの影響がありました。ルターは5つの「ソラ」(ラテン語で「のみ」という意味)を掲げ、ただ信仰のみ、ただ聖書のみ、ただ恩恵のみ、ただキリストのみ、そして、ただ神の栄光のみ（SDG）。これらがルターの宗教改革の標語だったのです。 その後も、SDGは大切にされ、ウェストミンスター小教理問答での第一問：「人の主な目的は何ですか」、答：「人のおもな目的は、神の栄光をあらわし、永遠に神を喜ぶことです」とあります。私たち人間の生きる目的は「神の栄光をあらわすため」。当時のキリスト者は、そのように生きることが、最高の人生だと考えたのです。 それは使徒パウロにとっても同じでした。「だから、食べるにも、飲むにも、何をするにも、すべて神の栄光を現すためにしなさい。」（1コリント10:31） では「神の栄光をあらわす」とは、いったいどういう意味でしょうか？それは、神さまの御心を映し出すということです。 「美しい高原の中を、早朝、散歩していたとき、きれいな池がありました。その水面に、朝日に照らしだされた木々の美しい緑が映し出されるのを見て、その素晴らしさに感動しました。『神の栄光をあらわす』とは、こういうことではないかと思いました。神さまを映し出すためには、ある意味で、自分自身が無にならないとできないことです。・・・私たちの心がいろいろな思いで波立っていると、神の栄光を映し出すことはできない。『神がすべてであり、私たちは無である。』そのような姿勢です。」（『五つの“ソラ"から』吉田隆）
《祈り》主よ、私の心が自分のためではなく、心から神さまの心を映し出すことができますように、静まり、清らかに、あなたの美しさを映しだせる日とさせてください。
牧師　和田一郎
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