持つ者は持たざる者に対する責任がある

「すべて多く与えられた者は、多く求められ、多く任された者は、さらに多く要求される。」 (ルカによる福音書12章48節)
 元メジャーリーガーのイチローさんは、今でもアメリカ・シアトル・マリナーズで会長付特別補佐であり、日本プロ野球の名球会入りした確固たる地位をもった人です。しかし、今も高校球児への特別指導や高校野球女子選抜との勝負など、若者たちへの育成活動に取り組んでいます。イチローさんは「ただ野球がうまくなってほしいだけじゃない」と言います。「野球をやっていなかったら、みんなと出会ってないわけだからね。人との出会いなんて、そういうもんですよ。奇跡だからね。そういうものを大事にしてほしいなと思うね。僕が期待するのは、人の痛みとか気持ちを自分なりに想像したり考えたりすること。そういう優しい人になってほしい。それが一番期待すること」と話されていました。  フランスに「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」という言葉があります。 「noblesse(貴族)」と「obliger(義務を負わせる)」を合成した言葉で、財力、権力、社会的地位をもつ者には責任がともなうことをさす言葉だそうです。身分の高い者はそれに応じて果たさねばならない社会的責任と義務があるという、欧米社会に根付いている基本的な道徳観ですが、これは聖書の価値観が反映されているといわれます。ルカ福音書12:48のように、多く与えられた者は、多く求められるのです。これは、教会に向けられた言葉です。神さまに多くを与えられ、任されている教会は、それだけ神に愛され、重んじられ、期待されているのですから、弱い人々に手を差し伸べる社会的責任があるのです。使徒パウロも教えています。 「私たち強い者は、強くない者の弱さを担うべきであり、自分を喜ばせるべきではありません。おのおの、互いを築き上げるために善を行い、隣人を喜ばせるべきです。」(ローマ15:1-2)。私の痛みを知ってくださった神の愛に応えて、人の痛みを感じられるように心がける。持つ者は持たざる者に対する責任があることを覚えましょう。
《祈り》神さま、これまで私は自分の喜びにしか目を向けていませんでした。しかし、あなたは、恵みと共に責任を私たちに託されました。人の痛みを分かる者としてください。
牧師 和田一郎
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