十戒⑦(全11回)

【第6戒】 「殺してはならない。」 (出エジプト記20章13節)
 これは、自分も含めて人を殺してはならないという戒めです。 人の命には限りがあり、いつか必ずおとずれる死を誰もが自覚しています。そうであれば、人が人を殺してはならないという理由はどこにあるのでしょうか。聖書には「神は人を自分のかたちに創造された」(創1:27)とあります。神は人を造り、その一人一人を愛し、やがてその一人一人は神のもとに召されていきます。私たちの命は神さまからの預かりものですから、「殺す」ということは神の権威を犯すことになるのです。私たちは自分で自分の命を所有しているのではありません。神は人を造り、人を愛し、人を神さまとの交わりの中においてくださり、人の命は神が所有しているとキリスト者は考えています。 しかし、この戒めは単なる物理的な人殺しだけを指しているのではなく、人に対して怒りや憎しみを抱くことも殺人と同じであるとマタイ福音書に書かれています。 「昔の人は、『殺すな。人を殺した者は裁きを受ける』と命じられている。しかし、私は言っておく。きょうだいに腹を立てる者は誰でも裁きを受ける。きょうだいに『馬鹿』と言う者は、最高法院に引き渡され、『愚か者』と言う者は、ゲヘナの火に投げ込まれる。」(マタイ5:21-22)と、きょうだいに腹を立てて侮辱することは殺すことと同じだとイエスさまは言われるのです。私たちと関わりのある人の命も神さまのものであり、神さまが生かしておられるのですから、その命の尊厳を損なうことは神に対する冒涜なのです。 第六戒の戒めは、妊娠中絶や死刑の問題、自殺、戦争とも深く関わっています。どの問題についても人の命の問題です。たとえ戦争の原因を領土問題だ、国家間の権益問題だと分析したとしても、戦争を否定する確固たる理由は命の尊厳の問題です。自分の命も他者の命も共に神さまに与えられた者として、大切に思える人間関係を築く努力が求められているのです。
《祈り》主よ、この私の命も、私を傷つけたあの人の命も、あなたが創造した尊い命です。その命に優劣はありません。しかし、私には赦せない人がいます。自分が赦されているのに、それを知りながら他人を赦せないこの私を、どうぞ憐れんでください。
「十戒は二枚の板からなっている」  モーセが神さまから授かった「十戒」は、二枚の石に分かれていました。十戒は大きく二つの区分に分けることができます。前半の1戒―4戒は「神と人との関係」、後半の5戒―10戒は「人と人との関係」をいかに生きるかが記されています。
神と人との関係に関する戒律 【第1戒】「あなたには、私をおいてほかに神々があってはならない。」(3節) 【第2戒】「あなたは自分のために彫像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水にあるものの、いかなる形も造ってはならない。 それにひれ伏し、それに仕えてはならない。私は主、あなたの神、妬む神である。私を憎む者には、父の罪を子に、さらに、三代、四代までも問うが、私を愛し、その戒めを守る者には、幾千代にわたって慈しみを示す。」(4-6節) 【第3戒】「あなたは、あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。主はその名をみだりに唱える者を罰せずにはおかない。」(7節) 【第4戒】「安息日を覚えて、これを聖別しなさい。六日間は働いて、あなたのすべての仕事をしなさい。しかし、七日目はあなたの神、主の安息日であるから、どのような仕事もしてはならない。あなたも、息子も娘も、男女の奴隷も、家畜も、町の中にいるあなたの寄留者も同様である。主は六日のうちに、天と地と海と、そこにあるすべてのものを造り、七日目に休息された。それゆえ、主は安息日を祝福して、これを聖別されたのである。」(8-11節)
人と人とに関する戒律 【第5戒】「あなたの父と母を敬いなさい。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えてくださった土地で長く生きることができる。」(12節) 【第6戒】「殺してはならない。」(13節) 【第7戒】「姦淫してはならない。」(14節) 【第8戒】「盗んではならない。」(15節) 【第9戒】「隣人について偽りの証言をしてはならない。」(16節) 【第10戒】「隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛とろばなど、隣人のものを一切欲してはならない。」(17節)
牧師 和田一郎
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