十戒⑥ (全11回)
【第5戒】
「あなたの父と母を敬いなさい。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えてくださった土地で長く生きることができる。」 (出エジプト記20章12節)
第五戒からは人と人との関係に関する戒めになります。第五戒は文字通り、自分の両親を尊敬しなさいというものです。プロテスタント教会では、十戒は二枚の板からなっていて、この第五戒からは二枚目の石に刻まれていて、人間関係が主題となる教えだと解釈します。しかし、ユダヤ教ではこの第五戒までが一枚目の石で、神さまと私たちとの関係について「父母を敬え」と教えていると解釈しています。つまり、私たちに両親を与えてくださったのは神さまであり、両親を敬うことは神さまを敬うことに繋がるという教えなのです。イスラエルの民にとって、信仰を守るということは個人ではなくて家庭でした。その家庭において、家族に信仰の指導をするのが父親の役割でした。父親は、家族全体と神さまとの交わりの仲介者だったのです。家族は親を通して神さまの言葉を理解し、家族で礼拝し、祈りを学んだのです。ですから父母を敬うことが、親子の関係を超えて神さまとの関係に繋がるのです。 現代ではどうでしょうか。親を敬うことは親が年老いていくごとに難しくなっていきます。親と同じ大人になり、さらに親が年老いて弱っていくと介護の必要、認知症や病気になってしまい、尊敬すべき父母が自分にとって重荷でしかないと感じてしまう。その時の自己嫌悪、自責の念との戦いは、どこにその苛立ちを向ければよいのか途方に暮れてしまうのです。宗教改革者のルターは「このみことばに従って生活する人々は当然、聖なる人となる」と言ったほど「父と母を敬いなさい」という第五戒は、当然だと思いつつも難しい戒めでもあるのです。 老人ホームに入居してきたある父親と娘が話をしています。「何か必要なものない?まだほかの物もありそうだから、一度家に取りに行かない?」父は面談室の窓から、遠くの空を見ながらボソッと言った。「もう住まないのだから・・・行かない。」終の棲家を老人ホームと決めたのだから、里心がつくことはしたくない。娘にはその決意に聞こえた。長年過ごした生活をあきらめる辛さを乗り越え、老いを認めて毅然としている父の態度に、娘は尊敬の念を抱いた。
《祈り》神さま、自分で親を選ぶことはできません。すべてはあなたのご計画です。私を、この父と母の子としてくださったことに感謝いたします。あなたが与えてくださったものを大切にすることができますように。 「十戒は二枚の板からなっている」 モーセが神さまから授かった「十戒」は、二枚の石に分かれていました。十戒は大きく二つの区分に分けることができます。前半の1戒―4戒は「神と人との関係」、後半の5戒―10戒は「人と人との関係」をいかに生きるかが記されています。
神と人との関係に関する戒律 【第1戒】「あなたには、私をおいてほかに神々があってはならない。」(3節) 【第2戒】「あなたは自分のために彫像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水にあるものの、いかなる形も造ってはならない。 それにひれ伏し、それに仕えてはならない。私は主、あなたの神、妬む神である。私を憎む者には、父の罪を子に、さらに、三代、四代までも問うが、私を愛し、その戒めを守る者には、幾千代にわたって慈しみを示す。」(4-6節) 【第3戒】「あなたは、あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。主はその名をみだりに唱える者を罰せずにはおかない。」(7節) 【第4戒】「安息日を覚えて、これを聖別しなさい。六日間は働いて、あなたのすべての仕事をしなさい。しかし、七日目はあなたの神、主の安息日であるから、どのような仕事もしてはならない。あなたも、息子も娘も、男女の奴隷も、家畜も、町の中にいるあなたの寄留者も同様である。主は六日のうちに、天と地と海と、そこにあるすべてのものを造り、七日目に休息された。それゆえ、主は安息日を祝福して、これを聖別されたのである。」(8-11節)
人と人とに関する戒律 【第5戒】「あなたの父と母を敬いなさい。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えてくださった土地で長く生きることができる。」(12節) 【第6戒】「殺してはならない。」(13節) 【第7戒】「姦淫してはならない。」(14節) 【第8戒】「盗んではならない。」(15節) 【第9戒】「隣人について偽りの証言をしてはならない。」(16節) 【第10戒】「隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛とろばなど、隣人のものを一切欲してはならない。」(17節)
牧師 和田一郎
ご感想は下まで(スマホ・パソコンの方向けです) forms.gle/EkE9N8gDaJQ7ee2L9
発行者名 高座教会 www.koza-church.jp/
「あなたの父と母を敬いなさい。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えてくださった土地で長く生きることができる。」 (出エジプト記20章12節)
第五戒からは人と人との関係に関する戒めになります。第五戒は文字通り、自分の両親を尊敬しなさいというものです。プロテスタント教会では、十戒は二枚の板からなっていて、この第五戒からは二枚目の石に刻まれていて、人間関係が主題となる教えだと解釈します。しかし、ユダヤ教ではこの第五戒までが一枚目の石で、神さまと私たちとの関係について「父母を敬え」と教えていると解釈しています。つまり、私たちに両親を与えてくださったのは神さまであり、両親を敬うことは神さまを敬うことに繋がるという教えなのです。イスラエルの民にとって、信仰を守るということは個人ではなくて家庭でした。その家庭において、家族に信仰の指導をするのが父親の役割でした。父親は、家族全体と神さまとの交わりの仲介者だったのです。家族は親を通して神さまの言葉を理解し、家族で礼拝し、祈りを学んだのです。ですから父母を敬うことが、親子の関係を超えて神さまとの関係に繋がるのです。 現代ではどうでしょうか。親を敬うことは親が年老いていくごとに難しくなっていきます。親と同じ大人になり、さらに親が年老いて弱っていくと介護の必要、認知症や病気になってしまい、尊敬すべき父母が自分にとって重荷でしかないと感じてしまう。その時の自己嫌悪、自責の念との戦いは、どこにその苛立ちを向ければよいのか途方に暮れてしまうのです。宗教改革者のルターは「このみことばに従って生活する人々は当然、聖なる人となる」と言ったほど「父と母を敬いなさい」という第五戒は、当然だと思いつつも難しい戒めでもあるのです。 老人ホームに入居してきたある父親と娘が話をしています。「何か必要なものない?まだほかの物もありそうだから、一度家に取りに行かない?」父は面談室の窓から、遠くの空を見ながらボソッと言った。「もう住まないのだから・・・行かない。」終の棲家を老人ホームと決めたのだから、里心がつくことはしたくない。娘にはその決意に聞こえた。長年過ごした生活をあきらめる辛さを乗り越え、老いを認めて毅然としている父の態度に、娘は尊敬の念を抱いた。
《祈り》神さま、自分で親を選ぶことはできません。すべてはあなたのご計画です。私を、この父と母の子としてくださったことに感謝いたします。あなたが与えてくださったものを大切にすることができますように。 「十戒は二枚の板からなっている」 モーセが神さまから授かった「十戒」は、二枚の石に分かれていました。十戒は大きく二つの区分に分けることができます。前半の1戒―4戒は「神と人との関係」、後半の5戒―10戒は「人と人との関係」をいかに生きるかが記されています。
神と人との関係に関する戒律 【第1戒】「あなたには、私をおいてほかに神々があってはならない。」(3節) 【第2戒】「あなたは自分のために彫像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水にあるものの、いかなる形も造ってはならない。 それにひれ伏し、それに仕えてはならない。私は主、あなたの神、妬む神である。私を憎む者には、父の罪を子に、さらに、三代、四代までも問うが、私を愛し、その戒めを守る者には、幾千代にわたって慈しみを示す。」(4-6節) 【第3戒】「あなたは、あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。主はその名をみだりに唱える者を罰せずにはおかない。」(7節) 【第4戒】「安息日を覚えて、これを聖別しなさい。六日間は働いて、あなたのすべての仕事をしなさい。しかし、七日目はあなたの神、主の安息日であるから、どのような仕事もしてはならない。あなたも、息子も娘も、男女の奴隷も、家畜も、町の中にいるあなたの寄留者も同様である。主は六日のうちに、天と地と海と、そこにあるすべてのものを造り、七日目に休息された。それゆえ、主は安息日を祝福して、これを聖別されたのである。」(8-11節)
人と人とに関する戒律 【第5戒】「あなたの父と母を敬いなさい。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えてくださった土地で長く生きることができる。」(12節) 【第6戒】「殺してはならない。」(13節) 【第7戒】「姦淫してはならない。」(14節) 【第8戒】「盗んではならない。」(15節) 【第9戒】「隣人について偽りの証言をしてはならない。」(16節) 【第10戒】「隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛とろばなど、隣人のものを一切欲してはならない。」(17節)
牧師 和田一郎
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