十戒⑪(全11回)

【第10戒】 「隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛とろばなど、隣人のものを一切欲してはならない。」 (出エジプト記20章17節)
 これは、家に限らずあなたのものでないものは何でも欲しがってはならないという戒めです。他人のものをむやみに欲しがることは、第六戒以降の戒めのどれかを破ることにもつながります。人のものが欲しいからこそ盗み、人を殺し、姦淫し、そのために嘘をもついてしまうのです。 そもそも人間の罪がどこから始まるのかと考えると、私はやはり貪欲になってしまうことではないかと考えます。そのことを最もよく象徴的に表しているのはアダムとエバの物語です。蛇がやって来て女に向かって、「神は本当に、園のどの木からも取って食べてはいけないと言ったのか」(創世記3:1)と揺さぶります。「取って食べてみたい」という欲求を利用して、神さまへの信頼を揺さぶったのです。 私たちは今持っているものを、死んだ後まで持っていくことはできません。「欲しい」ものを手に入れたからといって何になるのか?と「死」は私たちを冷静にしてくれます。終わりの日から人生を逆算したとき、足し算ではなく引き算で考えることができます。もっとあれがあれば幸せ、これがあれば幸せだと、欲しいものを足し算をするよりも、あれが無くても、これが無くても幸せだと思える、引き算で人生を考えることができるのです。 欲しいものを手に入れられる豊かな人と、欲しくても手にすることができない人との格差が増大しました。資源やエネルギーの問題において「豊かさの限界」も明らかです。そのような社会を生きている私たちにとって、今最も切実な課題は、「欲することから解放されること」なのではないでしょうか。 「あなたがたは地上に宝を積んではならない・・・宝は、天に積みなさい。」(マタイ6:19-20)とイエスさまは言われました。私たちが本当に貪欲から解放されて生きるには、キリストの十字架による罪の赦しと復活にあずかる新しい命を生きることです。イエスさまは、この世で生き続けることを求めずに手放しました。地上の生活を欲しがることなく、天に宝を積むことが、すべての人々の救いの道となったように、貪欲から解放された私たちは、今ある十分な恵みに感謝して、明日に希望をもつことができるのです。
《祈り》神さま、私を解放してください。新しいもの、他人がもっているもの、便利なものを当たり前に使いたいという思いから。そして、お金や物がいつか足りなくなるという不安からも解放し、今あるものに感謝することができますように。
「十戒は二枚の板からなっている」  モーセが神さまから授かった「十戒」は、二枚の石に分かれていました。十戒は大きく二つの区分に分けることができます。前半の1戒―4戒は「神と人との関係」、後半の5戒―10戒は「人と人との関係」をいかに生きるかが記されています。
神と人との関係に関する戒律 【第1戒】「あなたには、私をおいてほかに神々があってはならない。」(3節) 【第2戒】「あなたは自分のために彫像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水にあるものの、いかなる形も造ってはならない。 それにひれ伏し、それに仕えてはならない。私は主、あなたの神、妬む神である。私を憎む者には、父の罪を子に、さらに、三代、四代までも問うが、私を愛し、その戒めを守る者には、幾千代にわたって慈しみを示す。」(4-6節) 【第3戒】「あなたは、あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。主はその名をみだりに唱える者を罰せずにはおかない。」(7節) 【第4戒】「安息日を覚えて、これを聖別しなさい。六日間は働いて、あなたのすべての仕事をしなさい。しかし、七日目はあなたの神、主の安息日であるから、どのような仕事もしてはならない。あなたも、息子も娘も、男女の奴隷も、家畜も、町の中にいるあなたの寄留者も同様である。主は六日のうちに、天と地と海と、そこにあるすべてのものを造り、七日目に休息された。それゆえ、主は安息日を祝福して、これを聖別されたのである。」(8-11節)
人と人とに関する戒律 【第5戒】「あなたの父と母を敬いなさい。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えてくださった土地で長く生きることができる。」(12節) 【第6戒】「殺してはならない。」(13節) 【第7戒】「姦淫してはならない。」(14節) 【第8戒】「盗んではならない。」(15節) 【第9戒】「隣人について偽りの証言をしてはならない。」(16節) 【第10戒】「隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛とろばなど、隣人のものを一切欲してはならない。」(17節)
牧師 和田一郎
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