十戒⑩(全11回)

【第9戒】 「隣人について偽りの証言をしてはならない。」 (出エジプト記20章16節)
 偽りの証言というのは偽証のこと、つまり「嘘」のことです。嘘をついたり、だましたりすることを禁じた命令です。日本には「嘘も方便」という言葉があり、嘘も時によっては物事を円滑に運ぶ手段であるとされています。しかし「真実を明らかにするよりも、守らなければならないものがある」という風潮は、家、会社、共同体の責任者を守るときに使われてしまいます。  SNSに代表されるITツールは、個人が情報を発信する機会を増やしましたが、それによって偽りの証言がネット空間に撒き散らされる状態を生みました。第九戒の「偽りの証言をしてはならない」は、フェイクニュースの拡散に加わった者が「知らなかったんだ」と言い逃れることも戒めています。 さらにSNSによって特定の人物を中傷することによって本人が傷つき、命を絶つという悲しい事件があります。『ジュネーヴ教会信仰問答』の第九戒についての解説、「問い210:なぜ特に公の偽証について言われているのですか。答:みだりに隣人を誹謗したり、中傷したりすることになれた人は誰でも、やがて裁判で偽証するようになりやすいことを示して、われわれに、悪口をいったり、けなしたりする悪徳を、もっと強くおそれさせるためなのであります。」とあります。誹謗中傷する言葉や、陰口というものは、それだけ見れば「嘘ではない」といえるかも知れません。しかし本人のいる所で言わずに、いない所で言うのは、本人の弁明なしの証言ですから真実性に欠けるのです。真実からかけ離れた証言が一人歩きして、それが本人の評価を落とし傷つけ、さらに共同体の秩序と平等性を損なうならば、大きな罪であり、第九戒に該当するのです。私たちは人前で偽りの証言をしないように、日々、建て上げる言葉で養われていくべきでしょう。「悪い言葉を一切口にしてはなりません。口にするなら、聞く人に恵みが与えられるように、その人を造り上げるために必要な善い言葉を語りなさい。」(エフェソ4:29)。
《祈り》神よ、私たちのこの口は汚れていますけど、どうか主がこれを聖めて賛美を授けてください。大いなる主の御名が天でも地でも崇められますように。
「十戒は二枚の板からなっている」  モーセが神さまから授かった「十戒」は、二枚の石に分かれていました。十戒は大きく二つの区分に分けることができます。前半の1戒―4戒は「神と人との関係」、後半の5戒―10戒は「人と人との関係」をいかに生きるかが記されています。
神と人との関係に関する戒律 【第1戒】「あなたには、私をおいてほかに神々があってはならない。」(3節) 【第2戒】「あなたは自分のために彫像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水にあるものの、いかなる形も造ってはならない。 それにひれ伏し、それに仕えてはならない。私は主、あなたの神、妬む神である。私を憎む者には、父の罪を子に、さらに、三代、四代までも問うが、私を愛し、その戒めを守る者には、幾千代にわたって慈しみを示す。」(4-6節) 【第3戒】「あなたは、あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。主はその名をみだりに唱える者を罰せずにはおかない。」(7節) 【第4戒】「安息日を覚えて、これを聖別しなさい。六日間は働いて、あなたのすべての仕事をしなさい。しかし、七日目はあなたの神、主の安息日であるから、どのような仕事もしてはならない。あなたも、息子も娘も、男女の奴隷も、家畜も、町の中にいるあなたの寄留者も同様である。主は六日のうちに、天と地と海と、そこにあるすべてのものを造り、七日目に休息された。それゆえ、主は安息日を祝福して、これを聖別されたのである。」(8-11節)
人と人とに関する戒律 【第5戒】「あなたの父と母を敬いなさい。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えてくださった土地で長く生きることができる。」(12節) 【第6戒】「殺してはならない。」(13節) 【第7戒】「姦淫してはならない。」(14節) 【第8戒】「盗んではならない。」(15節) 【第9戒】「隣人について偽りの証言をしてはならない。」(16節) 【第10戒】「隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛とろばなど、隣人のものを一切欲してはならない。」(17節)
牧師 和田一郎
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