十戒⑨(全11回)
【第8戒】 「盗んではならない。」 (出エジプト記20章15節)
これは、自分のものでないものを、所有者の許可なしに取ってはならないという戒めです。神さまは人間に必要なものを、すべて与えてくださっています。しかし、それは世界を創造された、神さまが所有しているものです。聖書は「所有」することを禁じてはいません。天地創造の初めに「園のどの木からでも取って食べなさい」(創2:16)と言われました。さらに放蕩息子の父(神)は、「私のものは全部お前のものだ」(ルカ15:31)と言い、神さまは人間に委ねたものを自由に管理し運用することを許しています。しかし、それは神さまとの交わりの中で所有できるというものです。献金についても旧約聖書には十分の一献金の勧めがありますが、十分の一だけが神さまのもので、十分の九は自分のものではなく、与えられたすべてが神のものであり、その感謝を十分の一の献金とするのです。この「所有」に対する認識こそが、「盗まない」社会をつくるための大きな前提です。 第八戒はイスラエル共同体にとって具体的な背景があります。創世記でヨセフを奴隷として売り飛ばした兄弟たちは、ヨセフの人生を盗んだのです。彼らの子孫であるイスラエルの民はエジプトで奴隷とされていた。つまり自由を盗まれていたのです。そこから解放されて「盗んではならない」と示された戒めは「誘拐や奴隷のように、人間の自由を盗んではならない」という具体的な戒めです。誰かの人生を思い通りに支配し、自由を略奪することも禁じているのです。親が子どもの人生を束縛すること、夫婦間での過剰な嫉妬や支配、組織の過剰労働による時間の搾取なども該当するのです。 キリスト者においては「信仰の自由」を奪うことに注意が必要です。同性愛を教会は受け入れるのか?LGBTQの問題はキリスト教会に分断を生んでいます。聖書の言葉を忠実に守ろうとする人たちと、聖書を文脈で理解しようとする人たちとの間で大きな摩擦があります。しかし、どちらの立場であってもその主張ゆえに相手を教会から排除することは赦されないでしょう。「信仰の自由」を盗んでしまうことになります。そうでなければ、キリストが二つのものを一人の新しい人に造り変え平和をもたらした(エフェソ2:15)、という福音という真理に立ちはだかることになるからです。どの問題も複雑ですが、無関心が誰かの自由を搾取し、誰かの人生を支配することのないように、向き合い続けるのが、共に生きてくださる神の愛を知る、私たちに出来ることではないでしょうか。
《祈り》主よ、私は祈ります。隣人が与えられた自由と賜物を取ってはいけないと知りました。隣人を愛する第一歩として、自分を戒めることができますように。 「十戒は二枚の板からなっている」 モーセが神さまから授かった「十戒」は、二枚の石に分かれていました。十戒は大きく二つの区分に分けることができます。前半の1戒―4戒は「神と人との関係」、後半の5戒―10戒は「人と人との関係」をいかに生きるかが記されています。
神と人との関係に関する戒律 【第1戒】「あなたには、私をおいてほかに神々があってはならない。」(3節) 【第2戒】「あなたは自分のために彫像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水にあるものの、いかなる形も造ってはならない。 それにひれ伏し、それに仕えてはならない。私は主、あなたの神、妬む神である。私を憎む者には、父の罪を子に、さらに、三代、四代までも問うが、私を愛し、その戒めを守る者には、幾千代にわたって慈しみを示す。」(4-6節) 【第3戒】「あなたは、あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。主はその名をみだりに唱える者を罰せずにはおかない。」(7節) 【第4戒】「安息日を覚えて、これを聖別しなさい。六日間は働いて、あなたのすべての仕事をしなさい。しかし、七日目はあなたの神、主の安息日であるから、どのような仕事もしてはならない。あなたも、息子も娘も、男女の奴隷も、家畜も、町の中にいるあなたの寄留者も同様である。主は六日のうちに、天と地と海と、そこにあるすべてのものを造り、七日目に休息された。それゆえ、主は安息日を祝福して、これを聖別されたのである。」(8-11節)
人と人とに関する戒律 【第5戒】「あなたの父と母を敬いなさい。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えてくださった土地で長く生きることができる。」(12節) 【第6戒】「殺してはならない。」(13節) 【第7戒】「姦淫してはならない。」(14節) 【第8戒】「盗んではならない。」(15節) 【第9戒】「隣人について偽りの証言をしてはならない。」(16節) 【第10戒】「隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛とろばなど、隣人のものを一切欲してはならない。」(17節)
牧師 和田一郎
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発行者名 高座教会 www.koza-church.jp/
これは、自分のものでないものを、所有者の許可なしに取ってはならないという戒めです。神さまは人間に必要なものを、すべて与えてくださっています。しかし、それは世界を創造された、神さまが所有しているものです。聖書は「所有」することを禁じてはいません。天地創造の初めに「園のどの木からでも取って食べなさい」(創2:16)と言われました。さらに放蕩息子の父(神)は、「私のものは全部お前のものだ」(ルカ15:31)と言い、神さまは人間に委ねたものを自由に管理し運用することを許しています。しかし、それは神さまとの交わりの中で所有できるというものです。献金についても旧約聖書には十分の一献金の勧めがありますが、十分の一だけが神さまのもので、十分の九は自分のものではなく、与えられたすべてが神のものであり、その感謝を十分の一の献金とするのです。この「所有」に対する認識こそが、「盗まない」社会をつくるための大きな前提です。 第八戒はイスラエル共同体にとって具体的な背景があります。創世記でヨセフを奴隷として売り飛ばした兄弟たちは、ヨセフの人生を盗んだのです。彼らの子孫であるイスラエルの民はエジプトで奴隷とされていた。つまり自由を盗まれていたのです。そこから解放されて「盗んではならない」と示された戒めは「誘拐や奴隷のように、人間の自由を盗んではならない」という具体的な戒めです。誰かの人生を思い通りに支配し、自由を略奪することも禁じているのです。親が子どもの人生を束縛すること、夫婦間での過剰な嫉妬や支配、組織の過剰労働による時間の搾取なども該当するのです。 キリスト者においては「信仰の自由」を奪うことに注意が必要です。同性愛を教会は受け入れるのか?LGBTQの問題はキリスト教会に分断を生んでいます。聖書の言葉を忠実に守ろうとする人たちと、聖書を文脈で理解しようとする人たちとの間で大きな摩擦があります。しかし、どちらの立場であってもその主張ゆえに相手を教会から排除することは赦されないでしょう。「信仰の自由」を盗んでしまうことになります。そうでなければ、キリストが二つのものを一人の新しい人に造り変え平和をもたらした(エフェソ2:15)、という福音という真理に立ちはだかることになるからです。どの問題も複雑ですが、無関心が誰かの自由を搾取し、誰かの人生を支配することのないように、向き合い続けるのが、共に生きてくださる神の愛を知る、私たちに出来ることではないでしょうか。
《祈り》主よ、私は祈ります。隣人が与えられた自由と賜物を取ってはいけないと知りました。隣人を愛する第一歩として、自分を戒めることができますように。 「十戒は二枚の板からなっている」 モーセが神さまから授かった「十戒」は、二枚の石に分かれていました。十戒は大きく二つの区分に分けることができます。前半の1戒―4戒は「神と人との関係」、後半の5戒―10戒は「人と人との関係」をいかに生きるかが記されています。
神と人との関係に関する戒律 【第1戒】「あなたには、私をおいてほかに神々があってはならない。」(3節) 【第2戒】「あなたは自分のために彫像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水にあるものの、いかなる形も造ってはならない。 それにひれ伏し、それに仕えてはならない。私は主、あなたの神、妬む神である。私を憎む者には、父の罪を子に、さらに、三代、四代までも問うが、私を愛し、その戒めを守る者には、幾千代にわたって慈しみを示す。」(4-6節) 【第3戒】「あなたは、あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。主はその名をみだりに唱える者を罰せずにはおかない。」(7節) 【第4戒】「安息日を覚えて、これを聖別しなさい。六日間は働いて、あなたのすべての仕事をしなさい。しかし、七日目はあなたの神、主の安息日であるから、どのような仕事もしてはならない。あなたも、息子も娘も、男女の奴隷も、家畜も、町の中にいるあなたの寄留者も同様である。主は六日のうちに、天と地と海と、そこにあるすべてのものを造り、七日目に休息された。それゆえ、主は安息日を祝福して、これを聖別されたのである。」(8-11節)
人と人とに関する戒律 【第5戒】「あなたの父と母を敬いなさい。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えてくださった土地で長く生きることができる。」(12節) 【第6戒】「殺してはならない。」(13節) 【第7戒】「姦淫してはならない。」(14節) 【第8戒】「盗んではならない。」(15節) 【第9戒】「隣人について偽りの証言をしてはならない。」(16節) 【第10戒】「隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛とろばなど、隣人のものを一切欲してはならない。」(17節)
牧師 和田一郎
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