鍛錬というものは
「およそ鍛錬というものは、当座は喜ばしいものではなく、悲しいものと思われるのですが、後には、それによって鍛え上げられた人々に、平安な義の実を結ばせるのです。」 (へブル人への手紙12章11節)
明治時代、江戸時代から続く「キリシタン禁制」が解禁されてから数年しかたっていない頃の話です。ある青年が友人に誘われキリスト教の演説会に行ったところ、演説会を妨害しようとする男たちが現れて会場は騒然となりました。そこにクリスチャンの大男が入ってきて、当然、彼らをつまみ出すかと思って見ていると、その大男は「お願いです。静かにしてください」と頭を下げたのです。その謙遜で立派な姿に感動した青年は、これをきっかけに教会に通い始め、洗礼を受けてクリスチャンになります。後に歯磨きを日本に普及させたライオン(株)の創業者、小林富次郎でした。 富次郎は事業に情熱を注ぎ、まずマッチの軸を製造しようと石巻に工場を建てました。ところが大洪水が襲い、購入した機械と買い付けてあった原木が流されてしまいます。しかも、流された原木で地元の人の家が壊れて非難の矢面に立たされました。すべてを失ったばかりか、地元の人に多大な迷惑をかけてしまった。富次郎は「もはや生きていられない」と思い詰め、川に飛び込もうとします。そのとき、ある言葉が浮かびました。それが今日の聖句です。彼が洗礼を受けた牧師からの手紙に記されていたものでした。 自殺を思いとどまった富次郎は東京で事業を始めて、「獅子印ライオン歯磨」を発売しました。富次郎は「そろばんを抱いたクリスチャン」というユニークな異名で呼ばれるほど、博愛主義で経営しました。歯磨き粉の箱に慈善引換券を入れ、慈善事業に捧げるなど、キリスト教世界観をもって事業を続けていったのです。 「平安な義」とは神の正義のことです。ただ利益を上げることではなく、「人を生かすために働く」という使命に生きることです。富次郎は失敗の中で、「自分だけの成功」から「社会に仕える働き」へと導かれていきました。洪水の経験が、彼を変えたのでしょう。だからこそ利益の一部を慈善に用い、人々の健康を支える事業を目指しました。人を支え、社会に平和の実を結ばせていくこと。その時、仕事は単なる金儲けではなく、神から託された使命へと変えられていくのです。
《祈り》神さま、失敗だらけの私を見捨てず、鍛え、育ててくださり感謝します。自分の利益だけではなく、人を生かし、「義という平和の実」を結ぶ者として歩ませてください。
牧師 和田一郎
ご感想は下まで(スマホ・パソコンの方向けです) forms.gle/EkE9N8gDaJQ7ee2L9
発行者名 高座教会 www.koza-church.jp/
明治時代、江戸時代から続く「キリシタン禁制」が解禁されてから数年しかたっていない頃の話です。ある青年が友人に誘われキリスト教の演説会に行ったところ、演説会を妨害しようとする男たちが現れて会場は騒然となりました。そこにクリスチャンの大男が入ってきて、当然、彼らをつまみ出すかと思って見ていると、その大男は「お願いです。静かにしてください」と頭を下げたのです。その謙遜で立派な姿に感動した青年は、これをきっかけに教会に通い始め、洗礼を受けてクリスチャンになります。後に歯磨きを日本に普及させたライオン(株)の創業者、小林富次郎でした。 富次郎は事業に情熱を注ぎ、まずマッチの軸を製造しようと石巻に工場を建てました。ところが大洪水が襲い、購入した機械と買い付けてあった原木が流されてしまいます。しかも、流された原木で地元の人の家が壊れて非難の矢面に立たされました。すべてを失ったばかりか、地元の人に多大な迷惑をかけてしまった。富次郎は「もはや生きていられない」と思い詰め、川に飛び込もうとします。そのとき、ある言葉が浮かびました。それが今日の聖句です。彼が洗礼を受けた牧師からの手紙に記されていたものでした。 自殺を思いとどまった富次郎は東京で事業を始めて、「獅子印ライオン歯磨」を発売しました。富次郎は「そろばんを抱いたクリスチャン」というユニークな異名で呼ばれるほど、博愛主義で経営しました。歯磨き粉の箱に慈善引換券を入れ、慈善事業に捧げるなど、キリスト教世界観をもって事業を続けていったのです。 「平安な義」とは神の正義のことです。ただ利益を上げることではなく、「人を生かすために働く」という使命に生きることです。富次郎は失敗の中で、「自分だけの成功」から「社会に仕える働き」へと導かれていきました。洪水の経験が、彼を変えたのでしょう。だからこそ利益の一部を慈善に用い、人々の健康を支える事業を目指しました。人を支え、社会に平和の実を結ばせていくこと。その時、仕事は単なる金儲けではなく、神から託された使命へと変えられていくのです。
《祈り》神さま、失敗だらけの私を見捨てず、鍛え、育ててくださり感謝します。自分の利益だけではなく、人を生かし、「義という平和の実」を結ぶ者として歩ませてください。
牧師 和田一郎
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