海のものと山のもの

「イエスは五つのパンと二匹の魚を取り、天を仰いで祝福し、パンを裂いて、弟子たちに渡しては配らせ、二匹の魚も皆にお分けになった。人々は皆、食べて満腹した。」 (マルコによる福音書6章41-42節)
 トモエ学園の校長先生は、お弁当について難しい栄養学の話をしませんでした。ただひと言「<海のもの>と<山のもの>を持たせてください」とお願いしたのです。魚や佃煮などは「海のもの」。野菜や卵、お肉などは「山のもの」。その二つが入っていれば十分でした。 この素晴らしさは、小学生でも簡単に分かることです。豪華なお弁当である必要はありません。のりと梅干しでもいい。きんぴらごぼうと、おかかでもいい。大切なのは「海」と「山」がそろっていることでした。さらに素敵だったのは、どちらかが足りない子がいても、叱られなかったことです。校長先生の奥さんが鍋を持って歩き、不足しているものをそっと加えてくれました。だから子どもたちは競争しませんでした。「誰のお弁当が立派か」ではなく、「海と山がそろったね」と喜び合ったのです。 (『窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子) この小学校は、神の国を思わせます。神の国では、人との比較は必要ありません。人と比べて「あの人には才能がある」。「自分には何もない」と比べる必要はありません。 しかし、私たちは信仰さえも人と比べて落ち込むことがあります。ところが、イエスさまが五千人を養われた時、そこにあったのは、たった五つのパンと二匹の魚でした。それは決して充分ではありませんでした。しかし主はそれを祝福し、すべての人を満腹させてくださいました。神の恵みの食卓では、「足りないこと」が問題ではありません。足りないところに主ご自身が必要を満たしてくださるのです。神の国とは、自分の弁当を誇る場所ではなく、お互いの不足が満たされることを喜ぶ場所です。
《祈り》神さま、私たちの教会が、それぞれに異なる賜物や生き方をしてきた人々が集う、豊かな食卓となりますように。「海のものと山のもの」がそろうように、喜びを分かち合う群れとしてください。
牧師 和田一郎
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