今あるものを大切にする

「私の恵みはあなたに十分である。」 (コリントの信徒への手紙二12章9節)
 信仰とは、今あるものに感謝して明日に希望をもつこと。 日本には「今あるものを大切に使い切る」という素晴らしい文化があります。「小豆(あずき)三つぶ包める布は捨てるな」という言い伝えもそのひとつです。使えなくなった布も捨てたりしない。着物はなんども縫い直し、やぶれたら継ぎを当て、着れなくなったら布を細く引き裂いて織り直す、「裂織(さきおり)」という手法が東北や信州にあるそうです。着るものが自給自足だった時代に布は貴重でした。綿花が採れない寒い地方では特に大切にされたのです。ですから着物がボロボロになっても捨てることなく裂織(さきおり)にしました。わずかな布も使い捨てにしない暮らしの知恵です。時代が豊かになって、今はなんでも使い捨てが便利とされていますが、父や母、もしくはお爺さんお婆さんが身に着けていた古い服を、再生して身に着けたいと思う人もいます。使い古された布や衣類には、昔と今を繋ぐ力があるのですね。 信仰とは、使い古された布を大切にする心と同じで、今あるものに感謝することです。キリストの十字架による「福音」とはすでに与えられたものです。もし自分はいつまで待っても恵まれない、今日も一つとして恵みが無かった・・・と思う人は、今ある恵みを見逃しているのではないでしょうか。今日あるこの命も「それは、あって当たり前」ではありません。 使徒パウロにはいくつかの持病がありました。その病を癒やして欲しいと、何度も祈りましたが、癒やされることはありませんでした。神さまはパウロの祈りに応えて「私の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中で完全に現れるのだ」と語られました。辛い時、私たちは失ったものや無いものばかりを数えてしまうものです。しかし、聖書は「今、与えられているもの」「今、あるもの」を数えてみなさい。その今ある恵みを神さまに感謝していくことによって、私たちの生き方は、恵みの上に恵みが積み重なっていくと告げています。今ある恵みを数えることは、神さまとの繋がりを見つけることなのです。
《祈り》神さま、私はいつもないものを、与えてくださいと祈っていました。自分は恵まれていないので、どうかもう少し恵みがあるようにと求めていました。しかし、すでに十分な恵みがあるのです。永遠の命と、日々新しく与えられる恵みに感謝します。
牧師 和田一郎
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