いのち

『ナゲキバト』より②
「しかしエリヤは、『子どもを私によこしなさい』と言って、彼女の懐から息子を受け取り、自分が泊まっている階上の部屋に抱いて上がり、寝台に寝かせた。そして主に叫んだ。『わが神、主よ、私が身を寄せているこのやもめにまで災いをもたらし、その子を死なせるおつもりですか。』彼は子どもの上に三度身を重ね、主に叫んだ。『わが神、主よ、どうかこの子の命を元に戻してください。』」 (列王記上17章19-21節)
 『ナゲキバト』(ラリー・バークダル著)より。ある時、ポップ爺さんは畑に出て9歳のハニバルに銃の扱い方を教えてくれた。そのあと畑で居眠りをはじめました。ハニバルはポップ爺さんが、かつて銃で狩りをした話しを聞いて、無性に銃を使ってみたくなりました。畑の先に見たことのない鳥を見つけて「鳥を撃てる機会なんて二度とこないぞ」と教わったばかりの銃の使い方で、ハニバルは鳥に狙いを定めて撃ちました。撃った衝撃で転びましたが、獲物めがけてハニバルは走りました。 お爺さんも慌てて起きて駆け付けた。「やったポップ、撃ったんだ、鳥だよ!」、獲物を見つけたハニバルはギクッとしました、綺麗な羽の鳥がグニャとなった死骸を持ち上げると、温かいものが指の間をしたたり落ちました。ポップに得意顔で笑ってみせるつもりが、吐き気がした。ポップは「ナゲキバトだよ、近くに巣があるだろう」と言った通り、茂みの巣に腹をすかせたヒナが二匹泣いていた。まだ小さいのに自分の巣と兄弟を守ろうとする気迫があった。「ハニバル、一羽は生き残れるだろうが父親鳥だけで二羽を育てるのは無理だ」。そうか僕は母さん鳥を殺したんだ。「どちらにするか決めなさい」祖父が言った意味は分かった。一羽を生かすためには、もう一羽を殺すしかない。ハニバルの目に涙があふれ、途方に暮れてポップを見上げたけれど、祖父は手を出さずに黙って見ている。ハニバルは手に取ったヒナをみせて、ポップが教えてくれた、痛みの伴わない方法を教えてくれてその通りにしました。母親鳥と一羽のヒナを並べて埋めて、ポップは何も言いませんでした。無言の教えは痛いほど胸に染みとおり、それ以来、決して忘れることはありませんでした。  預言者エリヤは、自分の命の恩人である母子の息子が死ぬという、その不条理を神に訴えました。しかし、「わが神、主よ、どうかこの子の命を元に戻してください」と、神こそが人の命の支配者であることをエリヤは知り信頼していました。命の始まりと終わりとは、主なる神様の御手の中にあります。
《祈り》命の源であり、すべての慰めの源である神さま、あなたに造られた者たちの生涯は、その初めも終わりも、万事を益としてくださることを信じ、ただ御名をあがめます。 牧師 和田一郎
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