「それでも信仰の父」 アブラハムの生涯⑫

「アブラハムの生涯の年数は百七十五年であった。アブラハムは良き晩年を迎え、老いた後、生涯を全うして息絶え、死んで先祖の列に加えられた。」 (創世記25章7-8節)
 アブラハムは、75歳で神の声を聞き、生まれ故郷を離れて旅立ちました。「あなたは生まれた地と親族、父の家を離れ 私が示す地に行きなさい」(創12:1)との言葉に、彼はすべてを託したのです。その一歩が、神の救いの物語の始まりでした。やがてアブラハムは175歳で息を引き取りました。 しかし、晩年の様子を見ると彼の死は決して静かで平和なものではなかったことが見えてきます。アブラハムには三人の女性との間に子がいました。正妻サラの子イサク。女奴隷ハガルの子イシュマエル。そして後妻ケトラの子たち。アブラハムは生前、財産のすべてをイサクに譲り、他の子どもたちには贈り物だけを与えて遠くに追いやりました。同じ父から生まれた兄弟たちの間に、争いと分断の種が蒔かれたのです。 聖書は、信仰の父アブラハムを美化しません。彼は時に偽りを言い、時にえこひいきをし、彼の行動が家族の争いを引き起こしてしまうような不完全な人間でした。それにもかかわらず、神は彼を選び、語りかけ祝福されました。 その祝福はイサクへと継がれます。「アブラハムが死んだ後、神はその子イサクを祝福された。」(創25:11)。この言葉に、私たちは心を打たれます。継承とは努力や血筋によるのではなく神の祝福によるのです。 私たちもまた、アブラハムのように過ちを犯し、誰かを傷つけることがあるかもしれません。それでも神は語りかけてくださるのです。私たちが信じて生きることができるのは、その祝福があるからです。アブラハムの物語は、清らかな理想ではなく、痛みと失敗、そして希望の物語です。そして私たちの人生もまた、その祝福の物語に連なっているのです。
《祈り》神さま。アブラハムは欠点も多く過ちもありました。それでもアブラハムを選び、語りかけ、導いてくださいました。どうか、私たちにもそのまなざしを向けてください。アブラハムに与えられたその祝福で、欠けの多い私たちを包んでください。
牧師 和田一郎
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