「牢獄での賛美」 その時パウロは考えた⑨

全12回 月曜-火曜
「この命令を受けた看守は、二人をいちばん奥の牢に入れて、足には木の足枷をはめておいた。真夜中頃、パウロとシラスが神への賛美の歌を歌って祈っていると、ほかの囚人たちはこれに聞き入っていた。」 (使徒言行録16章24-25節)
 数年前のNHK朝ドラ『エール』で、薬師丸ひろ子さん演じるヒロインの母が、空襲で焼け野原となった瓦礫の中で無伴奏で讃美歌「うるわしの白百合」を歌う場面がありました。3人の娘がまだ幼いときに、夫を亡くし、女手ひとつで育ててきた気丈な母はキリスト教会、聖公会に通う信仰者でした。戦争ですべてを失った。すすで黒く焼けた街、立ち上る煙。無残な焼け跡をさまよいながら、彼女が瓦礫から拾い上げたのは一冊の讃美歌でした。賛美歌「うるわしの白百合」が、彼女の口から焼け野原の町へ流れていく。 当初の台本では、薬師丸ひろ子さん演じる母が「戦争の、こんちくしょう!」と言いながら地面を叩くシーンでしたが、薬師丸さんから「うるわしの白百合」を歌いたいという提案があったそうです。さらにスタッフは2節だけを歌うことを考えていましたが、薬師丸さんは1節と2節すべてを完璧に暗唱されてきた。この曲はアカペラで歌うのはかなり難しい曲だそうですが、3分間の独唱を見事に歌いきったのです。 白百合はキリスト教で「復活」の象徴です。踏みにじられた地からも、再び命は咲くという信仰のしるしです。 宣教の旅に出た使徒パウロは、苦難の連続でした。彼は宣教のゆえに捕らえられ、暗く冷たい牢獄に閉じ込められました。しかし彼は嘆くことなく、鎖につながれたまま讃美歌を歌いました。「真夜中頃、パウロとシラスが神への賛美の歌を歌っていた」。 獄中に響くその賛美は、外の世界のどんな歌よりも自由でした。彼らの歌は、神の愛はどんな鎖にも縛られないという証しだったのです。それは悲しみを紛らわすための歌ではなく、悲しみの中にあってなお、神の恵みを信じる歌でした。 その時パウロは考えた:「苦しい時こそ賛美しよう。主を賛美することは私の力だ」
《祈り》神さま、私がどん底の苦しみにある時も、あなたを賛美する時、力が湧いてきます。主を喜ぶことは、私たちの力です。主を賛美するたびに新しい命を芽吹かせてくださいます。あなたの光を見失わないように。闇の中でも、あなたを賛美できますように。
牧師 和田一郎
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