人を正しく知るとは
「容姿や背丈に捕らわれてはならない。私は彼を退ける。私は人が見るようには見ないからだ。人は目に映るところを見るが、私は心を見る。」 (サムエル記上16章7節)
池波正太郎の小説『剣客商売』に「徳どん、逃げろ」という短編があります。傘屋の徳次郎は、御用聞き(当時の警察)の手下です。ところが博奕場で、八郎吾という盗賊と知り合います。そして徳次郎のことを自分と同じ裏稼業の人間だと思い込み、すっかり意気投合します。二人の友情は、最初から大きな勘違いがありました。 やがて八郎吾は徳次郎に、ある家への押し込みを持ちかけて準備を進めていくことになります。この八郎吾は盗賊ですから、それは明らかに「悪」です。しかし、そんな八郎吾にも、心から信頼できる仲間が欲しいという、人間の根源的な願いがありました。そして徳次郎を「徳どん」と呼び、信頼できる仲間と出会ったと思ったのです。やがて徳次郎が御用聞きの手下だと知る別の盗賊に命を狙われます。 すると八郎吾は「徳どん、逃げろ!」と命がけで逃がすのです。八郎吾は最後まで徳次郎の本当の正体を知りません。自分と同じ盗賊だと思っている。相手の本性は分かってなくても、相手を思う心は本物。悪を行う人間の中にも、人を信じたいという願いがあり、仲間が欲しいという寂しさがある。そして大切な人を守ろうとする「善」もあるのです。(『剣客商売(七)隠れ簑』) 旧約聖書に出てくる預言者サムエルが次の王を選ぶとき、神からこう告げられます。 「人は目に映るところを見るが、私は心を見る」と。私たちは人を見て「あの人はこういう人だ」と判断します。しかし、それは一部分にすぎません。悪い行いは「悪」です。しかし、悪いことをした人を「悪人」と決めつけ、分かったつもりになることもできないでしょう。私たちには見えないものがあります。その人を知るとは、その人のすべてを分かったと思い込むのではなく「この人には、私にはまだ見えていない心がある」と知ることも大切です。人は目に映るものを見ます。しかし主は心を見る。そのことを覚えるとき、同じ、神に愛されている人間として向き合うことができるのではないでしょうか。
《祈り》神さま、人を正しく知るとはどういうことなのでしょう?私たちは、不完全な罪人です。その不完全な私たちであっても、相手を十分に知らなくても、本当の愛情が生まれるのですね。それは、神さま、あなたの憐れみです。心より感謝いたします。
牧師 和田一郎
ご感想は下まで(スマホ・パソコンの方向けです) forms.gle/EkE9N8gDaJQ7ee2L9
発行者名 高座教会 www.koza-church.jp/
池波正太郎の小説『剣客商売』に「徳どん、逃げろ」という短編があります。傘屋の徳次郎は、御用聞き(当時の警察)の手下です。ところが博奕場で、八郎吾という盗賊と知り合います。そして徳次郎のことを自分と同じ裏稼業の人間だと思い込み、すっかり意気投合します。二人の友情は、最初から大きな勘違いがありました。 やがて八郎吾は徳次郎に、ある家への押し込みを持ちかけて準備を進めていくことになります。この八郎吾は盗賊ですから、それは明らかに「悪」です。しかし、そんな八郎吾にも、心から信頼できる仲間が欲しいという、人間の根源的な願いがありました。そして徳次郎を「徳どん」と呼び、信頼できる仲間と出会ったと思ったのです。やがて徳次郎が御用聞きの手下だと知る別の盗賊に命を狙われます。 すると八郎吾は「徳どん、逃げろ!」と命がけで逃がすのです。八郎吾は最後まで徳次郎の本当の正体を知りません。自分と同じ盗賊だと思っている。相手の本性は分かってなくても、相手を思う心は本物。悪を行う人間の中にも、人を信じたいという願いがあり、仲間が欲しいという寂しさがある。そして大切な人を守ろうとする「善」もあるのです。(『剣客商売(七)隠れ簑』) 旧約聖書に出てくる預言者サムエルが次の王を選ぶとき、神からこう告げられます。 「人は目に映るところを見るが、私は心を見る」と。私たちは人を見て「あの人はこういう人だ」と判断します。しかし、それは一部分にすぎません。悪い行いは「悪」です。しかし、悪いことをした人を「悪人」と決めつけ、分かったつもりになることもできないでしょう。私たちには見えないものがあります。その人を知るとは、その人のすべてを分かったと思い込むのではなく「この人には、私にはまだ見えていない心がある」と知ることも大切です。人は目に映るものを見ます。しかし主は心を見る。そのことを覚えるとき、同じ、神に愛されている人間として向き合うことができるのではないでしょうか。
《祈り》神さま、人を正しく知るとはどういうことなのでしょう?私たちは、不完全な罪人です。その不完全な私たちであっても、相手を十分に知らなくても、本当の愛情が生まれるのですね。それは、神さま、あなたの憐れみです。心より感謝いたします。
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