信仰を増してください
「わたしどもの信仰を増してください」(ルカ17:5)
創世記は、晩年におけるイサクとリベカ夫婦の関係が、初めの愛はどこに行ってしまったのかと思えるほど複雑になっていることを伝えています。一言で言えば、「欺き欺かれる関係」です。
「積年の恨み」なんて言いますが、夫婦の間で互いに対する不満が募り、最期には互いが競うように双子の子どもたちを夫と妻が一方の子どもを他方の子どもよりも偏って愛していったのです。
あるキリスト教育の専門家は「両親がいつも互いに微笑みをかわし合う家庭で育つ赤ん坊は、親に微笑み返すことを忘れない」と語りますが、イサクとリベカの夫婦はこの逆を行っていました。
そして、こうした人間不信の空気が漂う「家庭」で育った2人がエサウとヤコブでした。彼らも両親から「負の遺産」を受け継ぐこととなります。
このように、罪は犯したその人だけでは済まされません。必ず周囲の人々を巻き込むのです。そして、この罪の連鎖を断ち切るお方こそ、主イエスさまなのです。
ある時イエスさまは「7回赦しなさいと要求されました」。
当時のラビの諺に「3回赦すことのできる者は完全な人間である」という言葉がありましたから、イエスさまの標準は、ファリサイ派や律法学者が導くユダヤ教の教師たちの標準よりもはるかに高いものでした。
勿論、イエスさまは「7回赦したら、8度目は赦さないでよいか」ということを問題にしておられるのではありません。むしろ、その人の内に相手を赦す力があるかどうかです。
もちろん、生まれつき私たちにはそうした力はありません。ですから、それに至る唯一の道は、ぶどうの木であるキリストにつながり、常に神さまの恵みによって罪が赦されていることを実感する中で、神さまの御前に生かしていただくしかないのです。
今日の御言葉は、そのことに気づいた弟子たちの言葉でした。
いってらっしゃい。
牧師 松本雅弘