てぶくろと宿屋
「宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである」(ルカ2:7)
皆さん、ウクライナ民話『てぶくろ』という絵本(https://www.roomie.jp/2015/02/237229/)をご存知でしょうか。
ある時、森を歩いていたお爺さんが、手袋を落としてしまうのです。そこに一匹のねずみがやってきて、その中に入り込みます。しばらくすると、カエルがその手袋を見つけ、中に入っているネズミに「私も入れて」と頼むのです。
ネズミは快くカエルを迎えます。次にウサギがやってきて、やはり中に入れてもらいます。
次にキツネがやって来て、やはり中に入れてもらうのです。
不思議なことに手袋は次第に大きくなるのですが、彼らの心配をよそに、柔軟に伸びて、スペースが広がっていくのです。
次に来たのがオオカミです。小さい動物たちは、この恐ろしい顔をしたオオカミを仲間に迎えます。そしてイノシシです。最後に、クマがやって来ます。
彼が入ったらはちきれてしまうだろうと思うのですが、手袋の住人たちは色々言いながらも迎え入れるのです。大きさや姿かたちもちがう動物たちを包み込んだ手袋は、不思議なほどに柔軟性を発揮するのです。
イエスさまをお送りくださった神さまは、そのことを私たちに期待しておられたのではないかと思います。私たちが神さまから愛されている手袋の住人となる権利を持つ者として、自分とは違った人々を受け入れる責任があるのです。
そのようにして人の輪は広がっていく。そして、そのことを実現するために御子は手袋からはずれた場所に、私たちの身代わりに立ってくださったように思うのです。
今年もクリスマスを迎えます。ベツレヘムの飼い葉桶に眠る「赤ん坊」イエスさまは、私たちの救い主となるために、私たちの人生の同伴者となるために、闇のようなこの世に生まれてきてくださったのです。
そのことを共に覚え、私たちの「心の飼い葉桶(心の手袋)」に、温かくお迎えしたいと思うのです。
いってらっしゃい。
牧師 松本雅弘