信仰義認と雄山羊のビール

「『正しい者は信仰によって生きる』と書いてあるとおりです。」 (ローマの信徒への手紙1章17節)
 「ボックビール」というドイツのアルコール度数が高いビールがあります。ボックを飲むと栄養価が高いので「ボック(Bock)若い雄ヤギ」のように元気になると言われ、ラベルに雄ヤギ(Bock)の絵が描かれることが多いのです。このボックビールが、宗教改革者マルティン・ルターを支えました。宗教改革は1517年、ルターがローマ教会を批判した「95ヶ条の論題」が引き金となりました。ルターが掲げた改革の波は、ちょうど実用化されたグーテンベルクの印刷機によって瞬く間に広がり、ローマ教会による貪欲な搾取に不満をもっていた人々の間で広がりました。その状況に神聖ローマ皇帝カール5世は、ルターを議会に呼びよせます。異端者として処罰されるかもしれない、その議会で登壇を待つルターに、彼の信者がジョッキに注がれたボックビールを渡します。ルターはそれを一気に飲み干し、勇気を持って皇帝たちに立ち向かったのです。そして自説を撤回するよう迫られると「聖書に書かれていないことを認めるわけにはいかない。私はここにいる。それ以上のことはできない」と、自分は神に忠実であることを説いたのです。  ルターの主張は「信仰義認」です。義認とは神に「義」とされること、つまり神さまに正しいとされ救いの恵みを意味します。ルターがそのことを確信した新約聖書の言葉がローマ書1章17節でした。彼の考えでは、罪深い存在である人が義とされるかどうかは、その人の外的な行為ではなく内的な「信仰のみ」によると考えました。ですから当時のローマ教会が、この世での罪を免除するとした「贖宥状」の発売をしたことを否定したのです。人間の努力によっては神の義には至れない、義人は行いによってではなく、信仰によって生きるのであると教え、プロテスタント教会の礎を作っていきました。
《祈り》私の主よ、どうか満たされる必要のある私を満たしてください。私の信仰は弱いのです。時として私は善い行いによってあなたの信頼を得ようとしてしまいます。どうか信仰によって生きることができますように。
牧師 和田一郎
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