腹をたてることは殺すこと？

「あなたがたも聞いているとおり、昔の人は、『殺すな。人を殺した者は裁きを受ける』と命じられている。しかし、私は言っておく。きょうだいに腹を立てる者は誰でも裁きを受ける。」 （マタイによる福音書5章21-22節）
　私たちは「人を殺してはならない」とういうことはよく分かります。人を殺してしまったら裁きを受けると聞いても、納得できます。しかし、人に腹を立てただけでも、殺人と同じように裁きを受けると言われてしまったら、途方に暮れてしまいます。もしそうだとしたら、毎日人を殺してしまってもいるのではないでしょうか。 しかし、イエスさまはこの言葉の後で、自分を恨んでいる人と仲直りをしなさい、あなたを訴える人と和解しなさいと戒めています。つまり殺したくなるほど憎しみのある相手と和解することを求めているのです。人を殺す人の心の底にあるのは、怒り憎しみといった感情です。根底にある怒り憎しみが解消されなければ「人を殺す」という問題は解決しないのです。 それでもやはり、イエスさまの教えは人間的な思いとしては、びっくりさせられる教えです。 「先生のお祈り聴いていたらびっくりしちゃった。」とある少女が素直に言いました。 黒柳朝(ちょう)さんというクリスチャン女性は、ヴァイオリン奏者と結婚して鎌倉に引っ越してきました。そして鎌倉・雪の下にある教会に通うようになったのです。すると牧師が家を訪問することがありました。娘の徹子がその牧師の祈りを聞いていました。 そして「先生のお祈り聴いていたらびっくりしちゃった。まるで人を殺しているような祈りをするものだから、この人どういう人だろうと思って目を開けてまじまじとお顔を見てしまったわ。でも、本当にそうね。私たち、心の中で人を殺してしまっているものね。」 （金沢元町教会、大澤正芳牧師説教「和解に生きる」より） 「きょうだいに腹を立てる者は誰でも裁きを受ける」という、マタイ福音書の言葉を聞いていて、幼かった黒柳徹子さんは、率直に聖書の言葉を受け取ったのですね。 心の中で腹を立てただけでも裁きを受ける。私たち人間の力では途方にくれることですが、イエスさまは私たち罪人と神さまとの和解を実現して下さいました。私たちがきょうだいと和解して生きる道も、このイエス・キリストと共に歩むことによって開かれるのです。
《祈り》神さま、心の中で思っていることを、あなたは見ておられます。顔で笑って心で恨んでいる、私の心を見ておられます。そのような私の弱さも、未熟さも知ってくださる主よ、どうぞこの小さな者を憐れんでくださいますように。
牧師　和田一郎
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