あんバタードーナツ

「残りの日々を数えるすべを教え 知恵ある心を私たちに与えてください。」 (詩編90編12節)
 ビジネスマンの吾郎は心臓発作を起こし、バイパス手術を受けました。手術から数か月が過ぎたある日、吾郎は友人のタカシと、カフェに立ち寄りました。吾郎は最近お気に入りだという「あんバタードーナツ」と、砂糖を入れたカフェラテを注文しました。それを見たタカシは、思わず声を上げました。「吾郎、だめじゃないか。心臓に悪いから『あんバタードーナツは禁止だ』って医者に言われていただろう」。しかし吾郎は、気にする様子もなく、穏やかにそしておいしそうに食べ続けながらこう言いました。 「手術の日、オレの心はとても平安だったんだ。『これで人生が終わるなら、それでもいい』って思えた。妻と一緒に、本当にすばらしい人生を送ってきたからね。手術室に入るその瞬間に、『最高の人生を生きてきた』と心から思えたんだ。こんな気持ちで迎えられる人生って、最高だと思わないか?」 タカシは少し戸惑いながら尋ねました。「それと、あんバタードーナツと、どういう関係があるんだ?」吾郎は静かに続けました。 「オレはもう、これから先はすべて「追加のボーナス」みたいなものなんだ。だからこそ、こうしてあんバタードーナツとカフェラテを味わっているんだよ」 吾郎は、「最高の人生」と「長い人生」をはっきりと区別していました。人生は、いつ病気や事故で終わりを迎えるかは分からない。40年であれ、60年、100年生きたとしても、長い歴史の流れの中では、ほんのわずかな時間にすぎません。健康管理や長寿そのものを否定するのではありません、ただそれだけが人生の価値ではない、ということです。人生の終わりを意識するからこそ、今日を大切に、感謝をもって生きる知恵が与えられる。そのことを詩編は静かに教えてくれます。
《祈り》主なる神さま。私たちの人生の始まりと終わりを知っておられるあなたに感謝いたします。人生の終わりがいつ訪れても「主よ、この人生をありがとう」と静かに言える歩みでありますように。
牧師 和田一郎
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