成長させてくださったのは神です

「私が植え、アポロが水を注ぎました。しかし、成長させてくださったのは神です。」 （コリントの信徒への手紙一3章6節）
　人間の親子というのは、他の哺乳類には見られない子育ての特徴があるそうです。児童精神科医師によると、それは自分の子どもを他人に預けて育てるという特徴で「共同繁殖」というのだそうです。人間の赤ちゃんは、とても未熟な状態で生まれてきます。馬や牛の赤ちゃんは、生まれて数時間後には立ち上がれるのですが、人間の赤ちゃんは立つのに1年以上かかるほど未熟です。それでも次の年にはまた子どもが産めるように人間が造られています。それは他人に子どもを預けてコミュニティの中で育てることを前提に、神さまが造られたということです。アブラハムやイサク、ヤコブの家族を見ると、親や兄妹以外にも雇人や親せきなどがいて、そのコミュニティの中で子どもを育てています。かつては旧約聖書に見られる部族という家族的なコミュニティがありました。神さまがコミュニティの中で子どもを育てることを前提に人間を造られたとするならば、現代社会のように祖父母がいない、核家族化した家族の中で子どもを育てるのは、不自然なのかも知れません。ですから家族だけの関係に加えて、地域のコミュニティとの関わりの中で子どもを成長させていく必要があるのです。核家族だけで育てることは、親子にとって心理的な負担を与えるそうです。 「私（パウロ）が植え、アポロが水を注ぎました。しかし、成長させてくださったのは神です。」とありますが、使徒パウロもアポロも伝道者として異邦人の信仰を育てる働きをした人です。二人とも時間をかけて、教会というコミュニティの交わりを作り、その中で信仰者を育てましたが、本当に育ててくださるのは、神さまなのだと告白するのです。 子育てはどんな親でも失敗だらけ、「自分がやらなければ」と責任をもつことは大切ですが、身近で信頼できるコミュニティと共に子育てするのは、神さまが造られたこの世の摂理に適っているのです。教会というコミュニティには多様性があります。神の愛に根ざした交わりがあります。そして「神の家族」として、親も子どもたちも神さまが成長させてくださるでしょう。
《祈り》善き羊飼いである主よ、私の家族を養ってください。あなたの恵みによって家族一人ひとりをよく導いてください。あなたが与えてくださった群れの中で、成長していくことができますように。
牧師　和田一郎
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