宣教の主役レイマン

「さて、アレクサンドリア生まれのユダヤ人で、聖書に詳しいアポロと言う雄弁家が、エフェソに来た。彼は主の道をよく学び、イエスのことについて熱心に語り、また正確に教えていたが、ヨハネの洗礼(バプテスマ)しか知らなかった。このアポロが会堂で堂々と教え始めた。これを聞いたプリスキラとアキラは、彼を招いて、もっと正確に神の道を説明した。 （使徒言行録18章24-26節）
　1905年（明治38年）冬のある日、近江八幡駅にW.Mヴォーリズは降り立ちました。アメリカからキリスト教の宣教のためにやって来た24歳の青年は、滋賀県、近江八幡に留まりその生涯を日本宣教のために捧げました。建築設計者として「建築の風格は人間の人格と同じく、その外見よりもむしろ内容にある」と考え1,500件あまりの建築設計を手がけて日本の近代建築発展に貢献しました。 家庭保健薬「メンソレータム」は、ヴォーリズの働きに共鳴した米国の発明者が提供したもので販売するために創設した近江兄弟社の社名は、クリスチャン精神に基づいて⼼を⼀つにする仲間という意味で「兄弟社」となったのです。アメリカから多くの宣教師が来ましたが、ヴォーリズは牧師ではなく「レイマンLayman」でした。 「一般市民、素人」の意味で、キリスト教では専任の教職者に対して「一般信徒」を表わす用語です。ですから聖書を神学的に解き明かすということはせず、同じレイマンであった近江兄弟社の社員と一緒にキリスト教伝道の種まきをされました。具体的には子どもに神さまの話をする日曜学校に力を入れていたそうです。建築家や実業家として有名なヴォーリズではありますが、来日された真の目的はそこにあったのです。 アキラとプリスキラ夫婦もまさにレイマンとして活躍しました。天幕作りの商売をしながら、使徒パウロを支え「家の教会」で重要な役割を担っていたのです。二人はアポロという旧約聖書には詳しいが十分な福音理解がなかった伝道者を見て、家に招いて一人前の伝道者に育てていきます。そして一人前の伝道者となったアポロを二人は支援して送り出しました。福音宣教における「レイマン（一般信徒）」の働きは現在のキリスト教会の主役です。牧師や宣教師だけではなく、信徒の賜物を生かし、信徒を励まして宣教していくことが求められているのです。
《祈り》神さま、あなたは教会に個性的な賜物をもつ信徒を与えてくださいました。信徒は教会と地域の架け橋です。そして、信仰生活では信徒同士の祈りが必要です。レイマンの賜物を用いてください。
牧師　和田一郎
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