キリストとサナギ

「だから、誰でもキリストにあるなら、その人は新しく造られた者です。古いものは過ぎ去り、まさに新しいものが生じたのです。」 （コリントの信徒への手紙二5章17節）
　卵から生まれたイモムシは、何度も皮をぬぎながら成長します。充分に大きくなると、気に入った場所で糸を吐き、からだをくくりつけて動かなくなりサナギになるのです。そして時間が経つとサナギの色がだんだんと変化して、サナギの背中がパリッと割れ、しわしわの羽を広げると、蝶に生まれ変わります。完全に造り変えられるのです。以前は地面を這いつくばっていましたが、空を飛べるように新しくされたのです。 「古いものは過ぎ去り、まさに新しいものが生じた」とあるように、キリスト者は、以前は罪人でしたが、キリストを信じる信仰によって新しい者にされました。それは、「古いことに捕らわれず、新しいことにも取り組もう」、といったことではありません。以前の口語訳聖書では、「だれでもキリストにあるならば、その人は新しく造られた者である。古いものは過ぎ去った、見よ、すべてが新しくなったのである」とありました。こちらの表現の方がはっきりしています。見た目は同じに見えますが、古い自分とは決別して、丸ごと変わったということです。それはイモムシが蝶になるぐらいの変化なのです。 サナギは英語で"Chrysalis"（クリサリス）です。そしてその語源は“Christ" (キリスト)です。古代キリスト教において、蝶(ちょう)はキリストの死と復活の象徴でした。そしてその変容は霊的な成長を現しています。イモムシはサナギの中で変容し、本質的にイモムシは死にます。そして蝶という自分本来の姿になります。ですからキリスト者はキリストと共に古い自分に死に、キリストと共に新しい命が立ち上がり、世界へとはばたきます。 使徒パウロは、キリストの愛によって新しくされたのに、昔の姿に戻ろうとする未成熟な信徒に対して「見よ、あなた達はすべてが新しくなったのだ」と、手紙を書き送っているのです。
《祈り》ああ、恵み深い神よ、私はかつて自分が嫌になって、自分を変えたいと願っていました。しかし自分ではどうにもならなくて落胆していました。それが、イエスさまの十字架を信じることによって、この自分がイエスさまと共に十字架に死に、新しい命を与えられたのです。キリストが私の内におられる、新しい命に感謝いたします。
牧師　和田一郎
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